*--体内最大の免疫系「腸管免疫を高める!」--*


体内最大の免疫系「腸管免疫」  (2005/08/08 update)
腸管免疫の働きと構造  (2005/08/09 update)
腸管免疫と腸内細胞  (2005/08/10 update)
健康面における重要パーツの一つといえる「腸内フローラ」  (2005/08/11 update)
腸管免疫を高める生活習慣  (2005/08/12 update)
食べて回復‐【免疫力】  (2005/08/13 update)
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体内最大の免疫系「腸管免疫」
 腸管は体内最大の免疫系であり、腸の健康を守ることは免疫力アップの決め手となります。腸内には数百種以上、約100兆個もの細菌が強制していますが、この《腸内フローラ》のバランスが崩れると免疫系に異常が生じ、さまざまな病気が起こります。

 腸管免疫を高めるには、バランスのよい食生活を心がけると同時に、ヨーグルトや発酵食品を積極的に摂取して、乳酸菌など有益な腸内細菌を増やすことが大切です。


■ 腸管は体内最大の免疫器官!?

 近年、体内最大の免疫器官は腸管だと言われるようになりました。何故なら、人の腸管は長さ7m、広げるとテニスコート1面分にもなり、体全体の免疫細胞や抗体の約60%が集中していることがわかってきたからです。

「腸管免疫」とは、腸管における免疫反応(腸管免疫)は、病原菌や異物から身を守る防衛機構の最前線として機能しています。

 日々、大量の食品を摂取する必要がある腸管からは、有害な異物や毒素が侵入する危険性が非常に高いという物理的な脆弱性があります。これを補うに、その腸管に充実した免疫システムがあります。これに腸内細菌が共生しているのは、生命のサバイバルという視点からも、極めて合理的なことだと言えるでしょう。


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腸管免疫の働きと構造
 腸管免疫の大きな特徴は、体にとっては危険な病原細菌やウイルスを排除し、食品や腸内細菌などの安全なものには寛容なことです。

 例えば、病原細菌が腸管に入り込むと、免疫細胞の連携プレーで《IgA》と言われる「免疫グロブリンA」がつくられ排除します。

「免疫グロブリンA(IgA)」とは、主に腸管粘液、唾液、涙、母乳などに含まれ、生体防御機構として重要な役割を果たし、免疫力、特に腸管免疫力指数のひとつとされています。また、母乳では特に初乳に多く含まれ、免疫機能が充分に発達していない新生児にとって重要な生体防御成分であることも知られています。

 口から入る食物は敵と見なされず、腸管での免疫システムが制御されます(経口免疫寛容)。ところが、食品アレルギーを引き起こす状態である場合、この免疫システムがうまく働かず、特定の食品に対して過敏に働いてしまうことで起こります。


### 腸管免疫のしくみ ###

 食品アレルギー原因物質・病原細菌などが腸内に入り込んだとき、腸管免疫系のシステムが作動し、パイエル板と腸管上皮間リンパ球を介して「異物(敵)と見なすもの」と「食品は異物(敵)ではない必要なもの」に脳・神経系を介して大別されます。

 「異物(敵)と見なすもの」に対しては 「免疫グロブリンA(IgA)」が産生され病原細菌防御機能システムが作動します。一方、「食品は異物(敵)ではない必要なもの」に対しては、腸管での免疫システムが抑制されるため、経口免疫寛容から、腸内に入ってきた食物からエネルギーを吸収することができます。しかし、このときに腸管での免疫システムが抑制されずに、経口免疫寛容されなかった場合、食品アレルギーを引き起こすことになります。

(参考資料:「免疫と腸内細菌」上野川修一 / 平凡社新書)


### 腸内免疫系の構造 ###

 腸管の断面には、腸管独自のリンパ節であるパイエル板があり、「免疫グロブリンA(IgA)」をつくるなど、腸管免疫の中心的役割を果たしています。

 パイエル板以外にも、腸管免疫のシステムにあたるものはあります。パイエル板の周囲には腸管上皮細胞があり、腸管独自のリンパ球や免疫細胞が存在します。その下には粘膜固有層という組織があり、その組織には異物から防御するときに産生される免疫細胞がストックされています。

 腸管免疫では、これらが互いに関連して機能し、体内に入る相手によって、非常に高度な判断で対応しています。ここでおもしろいことは、腸管独自の免疫システムは、腸内細菌がいないと働かないという点です。


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腸管免疫と腸内細胞
 人間の腸内には総数で約100兆個、重量にして1kgもの腸内細菌が定住しており。その種類も数百種類以上あるといわれています。

 腸内細菌は体に良い作用をする非病原性の「善玉菌」と、有害な病原性の「悪玉菌」、時と場合によって病原性を持つ「日和見菌」とに分類されています。

### 便1gあたりのさまざまな腸内細菌の数 ###

【善玉菌】
ビフィズス菌(10^9〜10^12/g)
ラクトバチルス菌(10^7〜10^9/g)

【日和見菌】
バクテルイデス菌(10^9〜10^12/g)
ユウバクテリウム(10^9〜10^12/g)
大腸菌(10^7〜10^9/g)

【悪玉菌】
クロストリジウム(10^7〜10^9/g)
腸球菌(10^5〜10^7)

(参考資料:「賢い食べ物は免疫力を上げる」上野川修一 / 講談社+α新書)


 腸管免疫の働きから見ると、善玉菌も悪玉菌も含む腸内細菌が敵として排除されず、体内で共生してうるのは不思議なことです。

 近年の研究では、腸内細菌が体内にいない状態では、病原細菌を排除する武器「免疫グロブリンA(IgA)」をつくりだす力が低く、口から入る安全な食物を排除しない腸管独自の免疫システム(経口免疫寛容)が働かないことが明らかになっています。

 腸管免疫を刺激し、サポートする腸内細菌は、健康の根幹に関わる最も重要な免疫システムを支えているといえるでしょう。 


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健康面における重要パーツの一つといえる「腸内フローラ」
 腸内フローラは健康面において重要な位置を占めているパーツの一つです。そこで、腸内フローラについて、以下に示します。


■ 年齢による腸内フローラの変化

 数百種類の腸内細菌が腸内に住み付いている様子を、お花畑に例えて「腸内フローラ」と呼んでいます。どのような細菌がどれぐらい存在するのかという腸内フローラのパターンは、個人により異なるだけではなく、年齢とともに変動します。

 生まれたばかりの乳幼児の腸内は無菌状態ですが、健康な成人の腸内フローラは通常、大部分が善玉菌で占められており、悪玉菌はわずかしか存在していません。

 ところが、加齢によって免疫機能が低下すると、腸内フローラの構成も変化し、老年期に入ると大腸菌や腸内腐敗をもたらすウェルシュ菌などの悪玉菌が増加し、善玉菌は減少していきます。結果、腸内では悪玉菌が優勢に傾き、多くの病気の原因となります。

 このような腸内フローラの状態を「腸年齢」が高い状態といいますが、近年、若い世代でも腸が蝋化しているケースが増えてきています。


■ 腸内フローラと健康

 良い腸内フローラとは、善玉菌が、その人にとって十分な数だけ棲みついている状態です。腸内フローラが健全であれば、免疫機能も活性化され、免疫機能が高まれば、善玉菌も増加します。腸内フローラと免疫系には相関関係が成り立っているのです。


■ 腸内フローラのバランスと疾患

 腸内フローラのバランスを取ることが健康には重要です。もし、腸内フローラのバランスが悪化してしまうと、免疫疾患や便秘・下痢、動脈硬化や肝障害などの疾患を引き起こすことになります。

 腸内フローラのバランス悪化を引き起こす原因として、食品、偏った食事や不摂生、年齢、ストレス、病原微生物、薬品などが挙げられます。これらの原因によって腸内フローラのバランスが悪化した場合、アレルギー・事故免疫疾患・感染症・癌などの免疫疾患を引き起こしたり、便秘・下痢・動脈硬化・肝障害などの疾患を引き起こすことがあります。

 これらの免疫疾患やその他の疾患にならないように健康を保つための対策としては、まず、腸内フローラのバランスを改善させ、疾病の予防や治療を行うことが必要となります。なぜなら、腸内フローラのバランスを改善されないまま、治療等を行うことは、免疫疾患を引き起こし、さらに病状を悪化させることになりかねないからです。

(参考資料:「賢い食べ物は免疫力を上げる」上野川修一 / 講談社+α新書)


■ 善玉菌を増やす方法?

 善玉菌を増やすには、善玉菌だけが食べることができ、悪玉菌は食べることが出来ないものを腸内フローラに与えることです。この善玉菌の育成を助ける食品群を「プレバイオティクス」と呼びますが、その代表がオリゴ糖です。オリゴ糖は、きな粉やコボウなどいろいろな食材に含まれています。

 また、腸内の善玉菌を分離して増やし、ヨーグルトに混ぜたりして外から補充する方法もあります。ビフィズス菌や乳酸菌のように腸内由来の微生物で、体に良い影響を与える微生物を「プロバイオティクス」と呼びます。

 最近では、良い菌を含む納豆などもプロバイオティクス食品と考えられるようになりました。日本の発酵食品の中には、今後もさらに、新しいプロバイオティクスが見出されていくことになるでしょう。


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腸管免疫を高める生活習慣
 免疫系は個人により非常に違いがあります。特に、腸管免疫を左右する腸内フローラは、免疫遺伝子により大きな影響を受け、個人差が大きいと考えられています。

 その人の免疫的体質、精神状態、食生活、それらによって左右されます。食生活では、摂取する栄養素が十分でない場合や、免疫力の維持に必要な特定の栄養成分が不足する場合に免疫力が低下します。

 また、ストレスの増加も免疫力低下の大きな原因となります。適度な運動と睡眠は健康維持には欠かせません。そこで、腸管フローラを健全に保ち免疫力を高めるための7ヶ条を下記に示します。


### 免疫力をつけるための7ヶ条 ###

・ビタミンE,C,Aを含む食品を積極的にとる

・亜鉛・セレンなどのミネラルを十分に含む食品を積極的にとる

・乳酸菌など体に良い微生物を含む食品を積極的にとる

・腸内の有益な細菌を増やす成分や抗酸化成分を含む食品をとる

・タンパク質は積極的にとり、脂肪は取り過ぎない

・食事は楽しみながらとる

・睡眠をよくとり、運動を適度に行い、ストレスのない生活を送る


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食べて回復‐【免疫力】
 腸管免疫に限らず、免疫力をアップするといわれる主な食品成分にはビタミンE、C、A、亜鉛、セレン、そして乳酸菌があります。

 ビタミンEやCは免疫系そのものを活性化すると同時に、その抗酸化作用によって免疫系を守ります。また、ビタミンAは免疫細胞を活性化し、細胞が充実した状態で働けるようにします。特に、腸の粘膜や皮膚を正常に保ち、病原細菌やウイルスの侵入を防ぐのに役立ちます。

 亜鉛は免疫細胞が成熟していくのに重要な役割を果たし、活性酸素を攻撃するミネラルでもあります。セレンも亜鉛と同様な仕組みで免疫系をサポートしています。

 また、腸内の善玉菌を増やし、免疫力をアップするために適した食品は、乳酸菌や納豆菌などのプロバイオティクスを含むヨーグルトや納豆などの食品です。近年、日本の発酵食品の中には、免疫機能を高めるなど健康に役立つ働きがあることが明らかになり、注目されるようになりました。

 これらの栄養成分を中心に、旬の食材をバランスよく摂取することは、腸内フローラを整えて腸管免疫をアップし、体全体の免疫力を高めることに繋がります。同時に、生活習慣を見直し、病気に負けない体づくりを目指しましょう。


### 免疫力をアップする栄養成分と多く含む食品 ###

【ビタミンE】
アーモンド、うなぎ、小麦胚芽入りパン、西洋南瓜

【ビタミンC】
赤ピーマン、ブロッコリー、芽キャベツ、柑橘類

【ビタミンA】
ニンジン、ほうれん草、海苔、レバー

【セレン】
青魚、タマネギ、昆布、卵、大豆

【亜鉛】
カキ、豚肉赤身、ゴマ、大豆

【乳酸菌など】
ヨーグルト、発酵食品

(参考資料:「賢い食べ物は免疫力を上げる」上野川修一 / 講談社+α新書)


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