*--中高年から始める「賢い脳を作る方法」--*


中高年から始める「賢い脳を作る方法」  (2005/07/22 update)
生体的な脳内の構造  (2005/07/23 update)
脳細胞を増やすには  (2005/07/24 update)
ストレスは脳細胞の敵!  (2005/07/25 update)
脳を若くする食事術  (2005/07/26 update)
記憶力向上で若い脳を作る  (2005/07/27 update)
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中高年から始める「賢い脳を作る方法」
 これまでの医学では、生後は脳細胞は増えないと考えられてきました。ところが1997年に報告された研究で、高齢者でも脳細胞は分裂し、増え続けることがわかりました。

 脳細胞を増やすには、なるべく外に出ていろいろな刺激を受け、新しいことを学び続けることが大切とされます。楽しい気持ちで意欲を持って脳を活性化することが、生涯現役を可能にするクリアで健康な脳を保つ秘訣と言えます。


■ 中高年でも脳細胞は増える!

 脳は幼児期に形成され、その後を増えないというのがそれまでの定説でありましたが、1997年にその説を大きく覆す画期的な発見がありました。

 カリフォルニアの世界的な生物学研究所「ソーク研究所」のエリクソン博士が、高齢者を被験者に起用した実験において、分裂している脳細胞(成長している脳細胞)だけが赤い光を放つような物質を注射して、被験者(高齢者)の脳を調べた結果、高齢者においても脳細胞が増えることが確認されました。

 更に、最近の研究では、脳細胞が増えるのは「細胞増殖因子」の分泌によることもわかってきました。

 一般に記憶するという場合には、グルタミン酸が神経伝達となり、脳の神経細胞の端末にあるシナプスで刺激を伝達しています。

 短期記憶が行われる場合には、シナプス前(神経)細胞からグルタミン酸が放出されます。これがシナプス後(神経)細胞にある「受容体」と結合すると、カルシウムがシナプス後(神経)細胞内に入ります。カルシウムが(神経)細胞内に入ると、様々な酵素が活性化され、グルタミン酸の受容体やシナプスの数が増えます。

 さらに、脳への刺激が続くと、シナプス前(神経)細胞と後(神経)細胞を接触させる棘という突起が2つ以上に割れ、その数が増えます。これを「長期増強」と呼び、脳神経の働きで最も重要な仕組みの一つにあたります。

 ただし、変化したシナプスも、使わなければ棘が縮み、最後には神経の突起も縮んでしまいます。

 つまり、記憶するためには、脳を常に刺激し続けることが必要であり、脳を使おうとする意欲が不可欠となります。「覚えよう」と心に命令することで、細胞増殖因子が働いて神経細胞のシナプスを増やし、結果的に記憶となるのです。


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生体的な脳内の構造
 ここで、専門的な話になりますが、脳医学的な話しを少しだけしましょう。


■ 刺激の繰り返しとシナプスの変化

◎短期記憶の場合

 シナプスの変化は一時的ではあるものの、カルシウムのために反応が高く長くなります。

 カルシウムが細胞内に入ると、さまざまな酵素が活性化され、グルタミン酸の受容体が増えたり、シナプスが増えます。

 シナプス後細胞については、グルタミン酸が放出されると、受容体にマグネシウム(Mg)が誘導され、シナプス後細胞内にはナトリウム(Na)とカルシウム(Ca)が生成されます。

◎長期増強の場合

 シナプスはカルシウムイオンが増えたことによって、受容体の数が多くなり、棘の数も増えていきます。

 刺激が続くと、刺激を受け取るシナプス後細胞のシナプスが大きくなり、受容体の数も増えます。

 さらに刺激が続くと、シナプス後細胞の棘が2つ以上に割れます。

 この時のシナプス後細胞内にはカルシウム(Ca)が生成されます。

(参考文献:Lamprecht, R. and LeDoux, J.Nature Neurosience 5;45,2004 )


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脳細胞を増やすには
 まず、脳科学や認知科学からの知見をもとに、ここでは、わかりやすいように、大まかな話しをてみましょう。


■ 脳細胞を増やすには、運動刺激的環境、学習が大切

 脳細胞は先述のように、増えたり減ったりを繰り返しています。近年の多くの研究から、と国、脳細胞が増えるのが記憶を司る「海馬」という部分であり、脳細胞を増やすためには、3つの大きな要因が必要であることも確認されています。

 その一つが「運動」です。運動は脳を刺激し、血流を良くし、酸素や栄養を与えるために神経細胞の突起が伸び、枝分かれを刺激します。特に指を動かすと、海馬の幹細胞が刺激され、記憶の神経が増えます。「最近、物覚えが悪くなった」と感じたら、まず、指を動かしてみるとよいでしょう。

 二つ目の要因は、「刺激的環境(遊び)」です。脳細胞は使わないと受容体の数が減り、シナプスの棘が縮んでいきます。人間は刺激を受けることがない環境で毎日を過ごしていると、刺激を受けることができず、脳細胞が減ってしまいます。

 三つ目は「学習」です。特に、記憶に関しては「覚えよう」という意欲が細胞増殖因子を動かしてシナプスを増やし、結果的に記憶となります。生涯学習にと新たに何かを勉強を始めたり、新聞や本をどんどん読み、頭を使いましょう。とはいえ、無理やり学んでストレスになっては逆効果となります。楽しい気持ちで意欲的に学習を行うことが大切です。

 いろいろな刺激を受け、新しいことを学びつければ、脳細胞はいくつにもなっても増加します。これが脳を活性化し健康な脳を保つ秘訣でもあります。

 脳に良い生活とは、脳を刺激する仕事や勉強、運動を行うことであり、脳に悪い生活とは、遊ばないで仕事ばかり、たまの休みは寝ているかテレビを見ている…といったような、ストレス性の高い機械的な繰り返しをしている刺激性の少ない環境のことをさします。


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ストレスは脳細胞の敵!
 ストレスが脳細胞を傷つけるに至る一例として、次のようなものが挙げられます。


 ストレスが脳を傷つけることは以前から推測されてきました。

 PTSD(心的外傷後ストレス症候群)といって、強度の恐怖体験や強度の心理的苦痛体験などの強度の心理的ストレス負荷や肉体的ストレスからくる心理的ストレスで精神傷害を受けた人たちの脳を調べると、脳の中でも、特に海馬が小さくなることが分かっています。

 悩みが多くなると(ストレスがかかると)、副腎皮質からコルチゾルというホルモンが生産されますが、このコルチゾルが放出されすぎると細胞が死滅します。

 脳を守るためには、自分で自分の心を傷つけないようにすることが大切です。次のような、脳を傷つける考えをやめるようにしましょう。


■ 心的外傷後ストレス症候群における【脳を傷つけるゆがめられた考え方】

 下記のものは心的外傷後ストレス症候群で一般的にみられる症状を挙げたもので、同じ心的外傷後ストレス症候群患者でも当てはまらないことが多々あります。また、心理学などやカウンセリングなどで対処法を学んでいる的外傷後ストレス症候群の症状を持つ人である場合、下記のものには当てはまらないことがよくあります。


【脳を傷つけるゆがめられた考え方】

1.白黒の考え
失敗するとそれですべてがダメだと思う。

2.単純化
失敗すると何をやってもダメだと思う。

3.知的フィルター
自分の否定的なことだけを取り出す。

4.肯定的なことを無視
自分のよい点を無視する。

5.結論を急ぐ
他人の心を憶測し、将来を予測する。

6.拡大化
ものごとの重要性を過大に考える。

7.感情の理由付け
感じたことを現実であると思う。

8.must の考え方
こうする意外にないと思う。

9.ラベル化
自分はダメだとレッテルを張る。

10.自分の責任にする
自分に責任のないことで自分を責める。

(参考資料:『高田明和の40歳から《賢い脳》をつくる《脳トレ》ノート』/ 講談社)

■ おまけ ――【対処法について】

 対処法においては、自分の内にあるものを直視し、知識を増やし、客観的な視野から自分の内にあるものを判断し、極端な発想から調和的な発想へ転換させることです。

 これには、広い視野と深い洞察力が必要となります。たとえば、宇宙から地球生物を見る、といった、あくまでも客観的な視野と、豊富な知識が必須となります。


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脳を若くする食事術
 脳の正常な働きには、一般的に《悪者》扱いされがちな肉類、糖分(砂糖)、脂肪(コレステロール)などが必要不可欠です。不足すると脳が栄養失調になり、鬱病や不安などをもたらし、脳の老化を早めます。

 それぞれの食品について脳との関係を考えてみましょう。


【1】肉類は脳の健康に欠かせない!

 年々、増加傾向にある鬱病を防ぐには、セトロニンという脳内物質が欠かせません。

 セトロニンは、トリプトファンという必須アミノ酸からしかできませんが、トリップとファンは肉類などに多く含まれています。

 また、肉類や母乳に含まれるアラキドン酸は脳に不可欠な成分であり、幸福感や喜びをもたらすアナンダマイドという物質をつくる働きで、近年、注目されています。

 脳の健康維持のためにも、肉類や魚の赤身を適量摂取しましょう。


【2】ブドウ糖は脳のエネルギー源

 私たちの脳は体重の約2%ですが、食事から摂取したブドウ糖の約20%は脳が使っています。脳はブドウ糖なしでは一刻も機能ができず、甘い物を摂取すると記憶力が改善されることがわかっています。

 また、朝食をとった場合の方が、食事をとらない場合よりも午前中の脳の働きが良いことなども実証されていますが、これは、食事により血糖値が上がるためだと考えられています。

 冴えた毎日のためには朝食をとり、疲れを感じたら、糖分の入った飲料で脳に栄養を与えましょう。


【3】コレステロールは悪者!?

 コレステロールは心疾患や脳卒中との関係から危険視されがちですが、コレステロールが全く無ければ細胞を作ることが出来ません。また、体内のコレステロールの一部は性腺ホルモンなどを含むステロイドホルモンになり、脳にとっては大切な働きをしています。

 食生活は栄養バランスが大切ですが、肉類、糖分(砂糖)、脂肪も適量を摂取するようにしましょう。

 ストレスが脳細胞を傷つけるに至る一例として、次のようなものが挙げられます。


#### 参考資料として ####

■ 鬱を防ぐトリプトファン

 トリプトファンは食肉、赤身の魚肉、牛乳などに含まれます。

そば生・・・・・・・・・・・約100mg
豆乳・・・・・・・・・・・・約 50mg
糸引き納豆・・・・・・・・・約230mg
かつお生・・・・・・・・・・約350mg
まぐろ生・・・・・・・・・・約330mg
牛サーロイン・・・・・・・・約270mg
豚ロース(脂身なし)・・・・約240mg
若鶏むね肉(皮なし)・・・・約280mg
牛乳・・・・・・・・・・・・約380mg

(参考資料:「高田明和の40歳から『賢い脳』をつくる『脳トレ』ノート」/ 講談社)


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記憶力向上で若い脳を作る
 記憶には、瞬間で変化する情報を理解する「短期記憶」と覚えたことを保持する「長期記憶」があります。

 高齢者では8桁以上の数字を瞬間に覚えることは困難ですが、訓練で維持出来るようになり、覚えようという努力は短期記憶を長期記憶に変えて保持します。訓練を続け、記憶力を高めましょう。


■ 顔から名前を思い出す訓練

 テレビに映った人の名前をすぐに言ってみましょう。思い出せない時は50音順に点検し、必ず思い出す癖をつけます。繰り返すことで名前が脳内で整理され、左右の脳が連絡しやすくなります。


■ 言葉をイメージする訓練

 下記の30個の言葉を3分間読み、次にこれを隠して、順番どおりに書いてみましょう。機会あるごとに言葉をイメージすると習慣になり、記憶力が確実にアップします。

### トレーニング:1 ### (制限時間3分)
ギター、自転車、まつたけ、キリン、コーヒー、パソコン、ビートたけし、マラソン、針、週刊誌、手帳、長嶋茂雄、マスク、ファックス、朝青龍、新書本、バケツ、スキー、新幹線、ディズニーランド、めがね、インク、新聞、バス、テレビ、卵、スパゲッティー、餃子、クレヨン、交番 ########################


■ 数字を瞬間に記憶する訓練

 下の数字を1問ずつ10秒見て、10秒後に別の紙に書いてみます。電話帳の番号などで毎日訓練することで、短期記憶が延びてきます。

い ―― 67456743
ろ ―― 683975007
は ―― 39269896
に ―― 7895645627

 生涯現役としての健康生活のためには、バランスの良い食生活と運動を実践し、脳にさまざまな刺激を与え、脳細胞を活性化しましょう。


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